するとそのときまで、おとなしくぶら()がっていたたぬきが、上から(こえ)をかけました。
もしもし、おばあさんくたびれたら(すこ)しお手伝(てつだ)いをいたしましょう。その()わりこの(なわ)をといて(くだ)さい。」
「どうしてどうして、お(まえ)なんぞに手伝ってもらえるものか。縄をといてやったら、手伝うどころか、すぐ()げて行ってしまうだろう。」
「いいえ、もうこうしてつかまったのですもの、(いま)さら逃げるものですか。まあ、ためしに()ろしてごらんなさい。」

縄をとかれたたぬき
 あんまりしつっこく殊勝(しゅしょう)らしくたのむものですから、おばあさんもうかうか、たぬきの言うことをほんとうにして縄をといて下ろしてやりました。
するとたぬきは、「やれやれ。」としばられた手足(てあし)をさすりました。