さてたぬきはおじいさんのうちを逃げ出してから、(なん)だかこわいものですから、どこへも出ずに(あな)にばかり()()んでいました。
 するとある日、うさぎはかまを(こし)にさして、わざとたぬきのかくれている穴のそばへ行って、かまを出してしきりにしばを()っていました。
そしてしばを刈りながら、(ふくろ)()れて()って来たかち(くり)を出して、ばりばり食べました。
するとたぬきはその(おと)()きつけて、穴の中からのそのそはい()してきました。
「うさぎさん、うさぎさん。(なに)をうまそうに食べているのだね。」
「栗の()さ。」
「少しわたしにくれないか。」
「上げるから、このしばを半分(はんぶん)()こうの山までしょっていっておくれ。」
たぬきは栗がほしいものですから、しかたなしにしばを背負(せお)って、(さき)(たつ)って(ある)き出しました。