向こうの山まで行くと、たぬきはふり(かえ)って、
「うさぎさん、うさぎさん。かち栗をくれないか。」
「ああ、上げるよ、もう一つ向こうの山まで行ったら。」
 しかたがないので、またたぬきはずんずん先に立って歩いていきました。

 山道のたぬきとうさぎ

やがてもう一つ向こうの山まで行くと、たぬきはふり返って、
「うさぎさん、うさぎさんかち栗をくれないか。」
「ああ、上げるけれど、ついでにもう一つ向こうの山まで行っておくれ。こんどはきっと上げるから。」
 しかたがないので、たぬきはまた先に立って、こんどは(なん)でも早く向こうの山まで行きつこうと思って、うしろもふり向かずにせっせと歩いていきました。