夕方(ゆうがた)になって、なんにも()らないおじいさんは、
(ばん)はたぬき(じる)が食べられるな。」
 (おも)って、一人(ひとり)でにこにこしながら、(いそ)いでうちへ(かえ)って来ました。
 するとたぬきのおばあさんはさも()ちかねたというように、
「おや、おじいさん、おかいんなさい。さっきからたぬき汁をこしらえて待っていましたよ。」
 と言いました。

おばあさんに化けておじいさんをだますたぬき 

「おやおや、そうか。それはありがたいな。」
 と言いながら、すぐにお(ぜん)(まえ)(すわ)りました。そして、たぬきのおばあさんのお給仕(きゅうじ)で、
「これはおいしい、おいしい。」
 と言って、(した)つづみをうって、ばばあ汁のおかわりをして、夢中(むちゅう)になって食べていました。