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それから間もなく、
おかあさんやぎは、
森からかえって来ました。
ところで、 まあ、
おかあさんやぎは、
そのときなにを見たでしょう。
おもての戸は、
いっぱいにあけひろげてありました。
テーブルも、
いすも、腰かけも、
ほうりだされていました。
洗面だらいは、
こなごなにこわれていました。
夜着もまくらも、
寝台からころげおちていました。
おかあさんやぎは、
こどもたちをさがしましたが、
ひとりもみつかりません。
ひとりひとり、
名前をよんでも、
たれも返事をするものがありません。
おしまいに、
いちばん下の子の名前まで来て、
はじめて、
ほそい声で、
「かあさん、
あたい、
時計のお箱にかくれているよ。」 というのが、きこえました。
おかあさんやぎは、
この子をひっぱりだしてやりました。
やっとのことで、
おかあさんやぎは、
泣くことをやめて、
末っ子やぎといっしょに、そとへ出ました。