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それから()もなく、 おかあさんやぎは、 森からかえって来ました。 ところで、 まあ、 おかあさんやぎは、 そのときなにを見たでしょう。 おもての戸は、 いっぱいにあけひろげてありました。 テーブルも、 いすも、(こし)かけも、 ほうりだされていました。 洗面だらいは、 こなごなにこわれていました。 夜着(よぎ)もまくらも、 寝台(しんだい)からころげおちていました。

 おかあさんやぎは、 こどもたちをさがしましたが、 ひとりもみつかりません。 ひとりひとり、 名前(なまえ)をよんでも、 たれも返事(へんじ)をするものがありません。 おしまいに、 いちばん下の子の名前(なまえ)まで来て、 はじめて、 ほそい声で、 「かあさん、 あたい、 時計(とけい)のお(はこ)にかくれているよ。」 というのが、きこえました。

たすかった末っ子やぎ

 おかあさんやぎは、 この子をひっぱりだしてやりました。 そこで、 この子の(くち)から、 はじめておおかみが来て、 ほかのこどもたちみんなたべてしまったことが、 わかりました。 そのとき、 おかあさんやぎは、 かわいそうな子やぎたちのことを、 どんなに()いてかなしんだか、 みなさん、 さっしてみてください。

 やっとのことで、 おかあさんやぎは、 泣くことをやめて、 (すえ)やぎといっしょに、そとへ出ました。