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(はら)っぱまでくると、 おおかみは、 やはり木のかげにながながとねそべって、 それこそ木の(えだ)()も、 ぶるぶるふるい(うご)くほどの(たか)いびきを立てていました。

 ところで、 おかあさんやぎが、 おおかみのようすを(とお)くからよく見ますと、 そのふくれかえったおなかの中で、 なにかもそもそ動いているのがわかりました。

「まあ、 ありがたい、 おおかみのやつ、 うちのこどもたちを、 お夕飯(ゆうはん)にして、 うのみにのみこんだままだから、 みんなきっとまだ()きているのだよ。」

 こうおもって、 おかあさんやぎは、 さっそく、 うちへかけこんで行って、 はさみと(はり)(いと)をとって来ました。 それから、 おかあさんやぎは、 このばけもののどてっ(ぱら)を、 ちょきんとはさみで、 ひとはさみはさみました。

こやぎを助け出すお母さんやぎ

するともうそこに、 (いっ)ぴきのこどもやぎが、 ぴょこんとあたまを出しました。 おかあさんはよろこんで、 またじょきじょきはさんで行きますと、 ひとり() ふたり出して、 とうとう()っぴきのこどもやぎのこらずが、 とびだしました。 みんなぶじで、 たれひとり、 けがひとつしたものもありません。 なにしろ、 この(おお)ばけものは、 むやみとがつがつしていて、 ただもう、 ぐっく、 ぐっく、 そのまま、 のどのおくへほうりこんでしまっていたからです。

 まあうれしいこと。 こどもたちは、 おかあさんやぎにしっかりだきつきました。 それから、 およめさんをもらう(しき)の日の、仕立(したて)()のように、 ぴょんぴょんはねまわりました。